2012年5月2日水曜日

無計画リレー小説 第八話


【登場人物】
古屋勇太‥‥十九歳。小説家志望のフリーター。祖父の営む古書店でアルバイト中。
美園さおり‥‥十七歳。高校生。勇太の幼馴染で、美園屋青果店の一人娘。
古屋繁‥‥勇太の祖父。古書店を営んでいる。
古屋一雄‥‥勇太の父。
ジェイムズ・J・ジェイムズ‥‥伝説の作家。
唯一髪‥‥モヒカン。


「勇太……!勇太……!気がついているかっ!? はあはあ……。」
連呼される自分の名前。その声の息づかいからは、何かとてつもないものと戦っているような情景が伺える。目を覚まさなければならない、そう確信をするけれども自分の瞼は閉じたままだった。

・・・

「ジェイムスよ!勇太を火星に展開したな!……勇太は……わが子は、一ヶ月間も彷徨っていたんだぞ!」
微かに聞こえる一雄の声。その声は恐怖か哀しみか定かではないが、震えているようだった。
「一雄、お前の葛藤もわかる。だが、ここは耐えるのじゃ」
じいちゃんの声も聞こえてくる。ふたりは自分の前に立ちふさがり、守ってくれているかのようだった。

「いでよ、唯一髪!姿を表わしたまえ!」
一雄は呪文のように叫び、念ずると両手を天へと掲げる。

「一雄!ならぬぞ。ふれてはならぬ。唯一髪、所謂このセカイをつくりし者へは……」
「しかし、親父!平穏な日常に執筆を催促するということは、過剰なストレスを生み出す!実際、勇太は一ヶ月も悩まされ続けた!」
「それは違うぞ、一雄。あのお方は救うてくれてるのじゃ。新たな優しきストレスのようなものは、日常を変えることのできる贈与性に等しいのじゃ」
「……し、しかし親父!参加ルールは書き手の意思に委ねるもの!しかも、今回はハングで名指しされっ……」
その時ふたりの会話を遮る巨大な拳が、一雄の鳩尾に食い込んだ。

「ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

(つづく)

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